2019年01月14日

 中山道夜逃げ日記 (3)

日記を書き進めるうちに心が固まって来た。
女房と一人娘の「おまあ」の身の振り方である
健蔵が夜逃げした場合、翌日には追手がかかるであろう
女房子供連れでは逃げ切れない。
女房子供は大阪に逃がそう
自分は江戸だと考えが纏まった。
先祖が大坂夏の陣で持ってきた刀を売り払った
それが二十両になった。
十五両を女房に五両を自分が
二日後午前四時、二人は左右に別れた
連絡は従妹が働いている本所米屋と決めた
健蔵は岡谷まであと十里の高遠までやってきた
高遠城の横手の峠道、この峠を越えれば
諏訪大社の前宮に出る
そこから八ケ岳の横をぬけて甲府、大月だ。
追手はまだ来ない
(続)
posted by 花蓮 at 07:56| Comment(0) | 日記

2019年01月10日

中山道 夜逃げ日記(2)

 健蔵の先祖は大阪夏の陣で豊臣方に付いて敗れて
中山道奈良井宿辺りまで逃げてきた
それから爪に火を灯すようなつましい生活を続け
元禄のころには、裏の土蔵に千両ほどのたくわえができた
しかし幕末の健蔵の時代、倉はからであった。
うなぎの寝床ような奈良井宿 身分が固定の二百年
みんな顔みしりの狭い世界、藤村が「夜明け前」と
表現した閉塞の闇。
健蔵はどうやって体面保ちつつ解決するか考えた。
〜夜逃げしかない〜 京に逃げるか、江戸に逃げる
東西一本道、南北は山また山
ふとんから起き上がると筆をとった。

    (続)





posted by 花蓮 at 04:32| Comment(0) | 日記

2019年01月09日

 中山道 夜逃げ日記

不思議な夢を見た
藤村の夜明け前をケアハウスの図書室で読んだ
私も爺だけど右を見ても左を見ても棺桶から出てきたような
年寄りばかり
普段は絶対読まない「夜明け前」を手にした
浦賀にペリーの艦隊が来た頃
この山深い奈良井宿にもうわさが聞こえててきた
こんな小説を無理やり読んだせいだろう、夢に出てきた
健蔵は中山道から奥まった座敷で目を覚ました
このところ御薗の商いが思わしくない、
昨日も代官所に収める黒船防備割り当金が工面できず
高利貸から借りてきた
返済期限までに売上がなければ屋敷を取られてしまう
 (続)
posted by 花蓮 at 05:39| Comment(0) | 日記