ママから電話があった
ママと言っても 20年来馴染みのスナックだ
彼女は昔 県知事も行く(経営者は県知事の小指)
クラブの若手だった。
掛け出しの私なんか小さくなって隅に座っていた
その彼女が独立してスナックを持った。
好みでは無かったので、何も無かったが
その店の子とは何人も付き合った。
今の妻ちゃんが来てから、夜の街はすっかりご無沙汰だ
「あんたさ 経済に詳しいから聞くんだけど
大事なお客さんが例の大企業の倒産で
連帯保証の何十億も請求されてんさ」
私も知っている大きな会社だ
「社長じゃないんだろう」
「そうだよ 頼まれて名誉職だったの」
「銀行は鬼みたいになって 回収に来るからな」
「保証人ってのは本人と同じだよ 情状なんかないさ 弁護士には」
「あいつらは法律にのっとった「追いはぎ」みたいなもんだから」
「新潟じゃつるんでる見たいだから 東京で知らない?」
「知らないな
俺の同級生は頭が悪くて直ぐ降参するんだよ」
「残念ね あんたも元気そうだから 飲みに来て」
「可愛い子入ったよ」
E子のような 素人のフレッシュさがないんだろうな
このスナックに居た夜明けの明星を眺めたF子と
偶然スーパーの前で会った
「あら^元気」
あの当時は27歳 多分今は37〜8歳か
容色の衰えは隠せない
「わたし 湖の前のエステに居るの」
「今度きて〜」
「男でもいいの?」
「電話してくれば 個室用意するわ」
その個室という言葉にひっかかった。
椰子の木陰のバリ島エステがなつかしい
あとで密かに彼女のエステ前まで行った
<ハワイエステのパンフだけ持って帰って来た>
だけど今はもう過ぎ去った事だ
何事にも<旬>がある
老人にはいろいろやる暇がない
やっぱり若者で美人の妻ちゃんしかない
「俺十年やれる株の儲けるPCソフト買ったんだ」
「この20年に一度の大波この次は生きていないよ」
「大丈夫 そのソフト残して行ってちょうだい」