ふと 思いついてブックオフに寄った
また100円コーナーで新田次郎の
「月のしずく」 「あやしうらめしあなかなし」を買った
はずれたにしても百円だからという軽い気持ちだ。
やはりはずれた
すべて短編である
自分で書いて見るとやはり短編は楽だ
「月のしずく」は悲しい筋だてばかりで
みんな途中で止めてしまった。
最終章の「エピタ」に期待を掛けて読み始める。
ところが新大久保で中国食料品店を開く
李という人物と日本人女性の恋人が現れる。
李は福建省出身の設定、人の良い人物、
新田さんの取材不足だろうとおもう。
中国でも<福建省>は泥棒県として有名なのだ
こんな人のいい人物は想定も無理と
読むのを止めてしまった。
幽霊物語の「あやしうらめし・・」の「遠別離」は
筆の運びが洒脱だ
以前新田の「霞町物語」を読んで以来の衝撃だった。
六本木の丘の下に旧町名<霞町>という街があった。
六本木の丘から霧が下ってきて、よく霞が立つからだ
新田次郎の生まれたところらしい
六本木・防衛庁のあった場所が、歩兵第一連隊の駐屯地
で新田の父も入営した地元だ
だからくわしい、
第一連隊はニ・ニ・六事件にも参加した部隊で
この隊はレイテで3000人全滅して、東京出身者は一人も帰って来なかった。
そして50年後 幽霊になって六本木ヒルズの建築に作用するのだ。
*
六年前亡くなった友人が、夜寝ていると
軍靴の音が聞こえて、自分の枕の上で
90度曲がって通過すると 私に語った
「そんな音が聞こえるなんて あんた 死ぬんじゃねェ」
その半年後 ほんとに死んでしまった
この小説もレイテ島から霊のみが、六本木に
帰還するのである
二百円の収穫はこの一作だけだった。
でも価値あり