2014年05月21日

大観園 (2)

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           <ライン河のレマンゲン鉄橋 守備塔>

戦前 ハルピンには東洋一と云われた

<大阿片窟>(あへんくつ)があった。

その事は なかにし礼の「赤い月 下」や

小説「大興安嶺 異聞」 「小説 ハルピン物語」

に出て来る。

それは”昔の話”と読みっぱなしにしていたのだが・・

翌日ホテルで五時に目が覚めた。

昨夜 苦悶に喘いだ美しい顔は

まだ静かに寝ている。

彼女を残して朝の散歩に行こうと

螺旋階段の豪壮なホテルの玄関を出る。

昼は土産を買えと付きまとう もの売りも達も いない

私は左側の美しい公園でなくて

昨日ホァンジェが激しく忌避した右側に曲がって行った

河岸の道は鉄道のガードに当たる

昨日書いた国境の満洲里への鉄路がある

そこには石造りの塔があった。

その周りは兵舎になっていて

解放軍兵士が体操をしていた

三階建てくらいの塔には、銃眼が開いている

<国境へ行く鉄橋を警護>しているのだ

むかしDVDで「レマンゲン鉄橋」と言う

ナチスと米軍の戦闘映画を見た事がある。

ライン河に掛かる鉄橋をナチスが破壊して

ベルリン方面に撤退しようとする

その守備塔の攻防戦だ

この満洲でも 松花江に掛かる長い鉄橋を

今も人民解放軍は守備していたのだ。

ガード下には数十人の守備隊がいた。

難癖をつけられないように

何気ないないような顔をして 観察した。

守備情報を上げる<帝国陸軍>もないのに

諜報者気分だ。

ガードをくぐると 景色は一変する

何だか荒(すさ)んでいる

あれっおかしいぞ

汚いだけなら 中国では見慣れている

それとも違う。

すさんでいると言う言葉が合っている

新潟の戦前の遊郭や東京吉原を歩くと

何か街が違う

<荒んだ>雰囲気を感じるが それに似ていた

  つづく

posted by 花蓮 at 09:07 | TrackBack(0) | インポート

2014年05月20日

大観園に咲く けしの花

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五月 ハルピンに春は無く、急に夏が来る

大陸の気候は 春と秋が無いに等しく

日本のように四季がはっきりしない

ほんの数週間前まで零下だった気温が二十度になる

私がハルピンの太平空港に降りたったのはそんな季節だった

おどけて柱の陰に隠れていた彼女は

黒髪と月の眉と瞳を覗かせた

綺麗なものは綺麗なもの

しかし悲しい別れの序曲が二人に鳴り始めているとは

知る由も無かった。

松花江の凱来飯店に二人のタクシーは向かった。

ホテルの前でホアンジェは屋台の林檎を買う

日本の林檎は美味しいんでしょ

私 行ってみたい

こんど連れてくよ」

連れてくとは 結婚しなきゃビザ下りない

いよ いよ 結婚か 

ホアンジェなら 暮らしてもいい

午後三時 夕食までにはまだ時間がある

松花公園まで散歩に出掛けた

二か月前まで 厚い氷が張りトラックが

走っていた川面は

ロシアに向ってゆっくり流れていた。

この河は君の故郷・牡丹江から流れてきているんだぜ

へ〜 そうなの あなた何でも知ってるのね

俺は 満人だよ

うそ〜」

そんな たわいもない会話が 心地良かった

キタイスカヤ通りが松花江に当たった所から

右側へ行く河岸の道がある。

何故かホァンジェは

そっちはいや!」

と激しく忌避した。

不思議だなと思ったが その考えは直ぐ消え去った。

ハルピン駅を出た鉄道は カーブしてきて松花江の

鉄橋を渡る。

河岸公園の道はそのガードの下へと続く

鉄道はチチハル・満洲里へ行くのだ

何十両もの長い列車が 

グァ〜ン グァ〜ンと

音を立てながら 国境へと向かう

   (続く)

posted by 花蓮 at 09:45 | TrackBack(0) | インポート

2014年05月19日

極寒の都 萌える心

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赤い月は<下巻>へと進む

満洲帝国の崩壊だ。

私の父が朝鮮木浦の陸軍にいるとき

ハルピンに出張を命ぜられた。

松花江に通じる石畳は明治の船着き場へ

行く道だ

伊藤博文首相が朝鮮人の安重根に暗殺された

ハルピン駅の裏側に当たる。

その石畳道は、戦前ロシアが占領している時は

<キタイスカヤ街>日本占領下は<ダイヤ街>

今は中央大街と名前を変えている。

だから父はダイヤ街を歩いて松花江の岸部に行った

私とモホァンジェは夜の中央大街(スカヤ街)を歩いた

この共産党がつけた名前が嫌いだ

夜になると気温は一段と下がる。

マイナス30度になっているので、空気を吸い込む

と頭がくらくらした。

満洲人のホァンジェもさすがに寒いのか

マフラーで覆面をする。

黒い瞳だけが覗いて、一段と魅惑的だ。

松花江の岸部公園には何百という氷像が

内部に赤青黄の蛍光灯を入れて輝いて

立っている。

此の世のモノとも思われない幻想の世界だ

あまりの寒さに岸辺のマックに入る。

ハルピンっ子は冬にアイスを食べる

ホァンジェもマフラーを下げて

ペロッとソフトを舐めながら

身ぶるいするような美しい瞳で

私を見上げた

僕 春になったら 必ず会いに来るよ

ホントに来てくれる?」

約束するよ、 日本は約束の時 小指を

絡ませるんだ

湯気で真っ白になったマックの窓辺で

ホァンジェの小指に絡める。

ハルピンの氷夜は更けていった

posted by 花蓮 at 08:47 | TrackBack(0) | 考えること