<シニガーのスープ>
今日は一転して 寒い雨
もともと何処に行く予定もないので良いのだ
昨日気が付いたのだけれど、
車のスノータイヤをまだ取り換えていなかった
関心が内向きになっているのを思い知らされて
一瞬唖然とした。
亡くなった友人の事をおもいだす
奥さんは何十年に亘る夫の浮気と
浪費で梅干しのように皺だらけだった。
葬儀ではむしろサバサバした様子
その彼がマニラのロハスブルバードの
レストランに誘ってくれた。
竹を交差させて 縄跳びのように跳ねる
フィリピンの踊りをやっていた
このロハスブルバードを北上すると
スービックの町に行く
やがてその夜 貧しいチェリルはシニガーを
美味しそうに食べた。
・
「これ美味いんだ」
「シニガーって酸っぱいんだけど 病みつきになる」
と言った。
夜の街に繰り出す前で、期待で盛り上がっていた
<なに喜んでいるんだろう>
と不思議に思ったが、今は霊界の彼が懐かしい し
シニガーが食べたい。
・
妻は来日するまえ、瀋陽領事館のビザが出なくて
ハルピンで腐っていた。
そんなとき、スカイプで友人にあった。
妻は 一度スカイプで元気な姿を見たのだ。
友人は言った
「待ってるよ」 三人で遊ぼうと思ったのだろう
その半年後 彼は死んだ。
妻の来日まであと一か月だった。
妻は 「あなたも逝けば」 という
妻は私の古いパスポートを見つけだしてきて
「フィリピンのスタンプばかりじゃないの」