2013年07月25日

短編小説 鎌倉狐の夢 第1章 湘南モノレール 朝比奈澄夫

日本は一旦辞めたら 次は惨めなんだから

分かってるよ」

こんな時の励ましは十倍の重荷を背負わされるようなもの

いたたまれなくなった秀雄はのろのろと営業カバンをもって外に出た

もちろん行く宛もない

自然と足は子供の時遊んだ湘南モノレールのある山に向かった

石段があって中腹に諏訪神社がある

高校の頃 湘南なのに何で諏訪なんだろうと思った事も

あったが、いつしか忘れてしまった。

それは秀雄の一生を根底で左右していたのだが

今は知る由もなかった。

諏訪神社から江の島が目の前に見える

石段の途中でカラスが低空飛行で秀雄を脅かす。

「畜生 カラスまで俺をバカにする

秀雄はうめいた

のほほんと育った秀雄は 

招かれざるセールスとして

ドアも開けてもらえず

プライドもいたく傷つけられていた。

毎日 嘘の営業日報に書く偽名も

思いつかなくなってきていた

1238年から続くその神社には 当時から生きている

尾っぽが銀色になった狐が住んでいた。

神社が出来た当時 腰越から鎌倉山 大仏殿のある深沢

まで鬱蒼とした森だった

狐は雪の下、材木座のあたりまで餌を取りに出かけた

狐はもちろん神社下の家に 秀雄が産まれた時から知っていた

秀雄の悩みなど たわいもない毎度の事

秀雄は人生が真っ暗になるような悩みの中で

あるセミナーの広告を見つけた

人生を解放する究極のメソッド>

アメリカ人トレーナーによる 自己解放の道

3泊4日  6万円

この文字が秀雄を捉えて離さない

その出版社に電話して申し込んで

会社には金曜の休暇願を出した。

当日 晴海の倉庫のような会場に行った。

(第1章 湘南モノレール 続く)

posted by 花蓮 at 08:28 | TrackBack(0) | 日記

2013年07月24日

短編小説 鎌倉狐の夢 1章湘南モノレール 朝比奈澄男

山岸秀雄はいつもの諏訪神社の縁の腰かけて

江の島を眺めていた。

首をまわすと富士も見えた

前夜の南風で湘南は砂だらけだった

〜砂交じりの茅ヶ崎〜 桑田の歌の通りだと秀雄は思った。

会社のパンフで縁の砂を払う

地元に生まれ 江ノ電で海の見える「七里ヶ浜」で降り、

同じ名の高校に通った。

身長は179p サッカーに夢中になり、あまり勉強した記憶

も無いのに横浜国立大に受かり、今は一流の生命保険会社に

勤めている。

秀雄の生家は江の島から藤沢駅に抜けるバス通りに

昔からあった菓子舗「鎌倉屋」と言う。

江戸時代は江の島弁財天の参拝客で賑わったというが

今は父が細々とやっている。

秀雄の生家の前には、朝鮮人虐殺で有名な甘粕大尉と

同じ名の豆腐屋がある。

秀雄は高校の日本史で習ったその名が妙に気になって

消えかかった甘粕の看板の前をそそくさと歩いた。

なぜならその甘粕大尉の親戚だと分ったら愛想のいい

小母さんがどんな顔をするだろうと勝手に心配したからだ。

秀雄は憧れの丸の内勤務だと思っていたら

半年の研修が終わると藤沢支店勤務を命ぜられた。

意気揚々と銀座を歩くのかと思ったら

シラスの臭いふんぷんの腰越漁港を歩いている。

会社も慣れたもの 新入社員を最初は出身地に飛ばし

親戚知人を勧誘させるのだ。

運よくこの試練に耐えた者だけ、所長、

本社勤務の道が残っている。

そんな事も知らない秀雄は鵠沼海岸などの

高級住宅街を回ったが断られ続きの個別訪問は

精神的にサッカーの何倍もきつかった。

営業をさぼって家に寄ると、最初はなぐさめてくれた

母も文句を言うようになった。

「秀雄 あんた一流の会社に入ったんだから

辞めちゃだめよ

      (第1章 湘南モノレール つづく)

posted by 花蓮 at 19:40 | TrackBack(0) | 考えること

短編 書き始め

昨日 病院に見舞いに行ったら丁度ひる時で

ナースステーションはごった返し

E子ちゃんを見つけた。

「あら久しぶり」

ほんとに先週は1回も会っていない。

「最近はなにしてるの?」

とっさに 何かかっこいい事を言おうと

頭を回転させた、

「小説書いてるんだよ」

「へェ〜 かっこいい」

「ビブリア古書堂知ってる」

「あれの真似して 鎌倉の事書いてるんだ」

「こんど 読まして」

「ああ じゃ持ってくるよ」

他の看護婦が見ている

私は分かりやすいと死んだ親友が言ったのを

思い出した

<きっと嬉しそうな顔がありありなんだろうな>

まずい早めに切り上げよう

しかし E子ちゃんはその場を去らないのだ

そのうち母が上の階から降りてきた

感づかれたかな

不機嫌な顔をしている

<俺は 洗濯物取りに来たんじゃねェよ

E子に会いに来たんだ>

と言ってやりたくなった。

あぶねェ

小説なんか書いてない

どうしよう

家に帰ってPCに向かう

<大仏殿の狐>

構想は去年ブログに発表したが

書く気が起こらなかった

書かねばなるまい

第1章は逆さまにして現代にした。

時代考証が無いから自由自在

楽だ

江の島・腰越の和菓子屋にした

明日から多分4日間連載

わずか2時間で書き上げてしまった。

原稿用紙5枚の超短編だけど

ピりッと辛子が効いて

良く仕上がったと思う。

2章は戦国時代に移ろうと思ったけど

主人公「秀雄」を稲村ガ崎や日景茶屋などに

遊ばせて鎌倉遊びをしたいと思うようになった。

多分新潟から離れた事が無いE子には

興味深いだろう。

明日から連載が始まります。

「短編小説 鎌倉狐の夢 第1章 湘南モノレール

posted by 花蓮 at 12:21 | TrackBack(0) | 日々の出来事